情報システム部門の意義

自社を"思いやる"IT担当
たとえば、経営者の方が、販路拡大のため、インターネットでの販売、すなわち、ECサイトの立ち上げを考えたとします。
話を聞いた業者は「他社は、こうやっています」とか「この機能も追加したほうがいいですよ」など、様々な情報を皆さまに教えてくれるでしょう。
しかし、
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構築費用だけでなく、その後の運営費用はどれくらい必要か?それら費用負担は経営上、問題ないか?
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ECサイト導入によって、在庫管理や顧客対応など、今までの仕事のやりかたを、どう変えなければならないか?そのために、何が必要で社内/社外の誰と、どのような調整すればよいか?
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サイバー攻撃や顧客情報の漏えいなどを発生させないためには、従業員教育含め、何をすればよいか?
などは、業者は考えてくれません。業者は注文通りのECサイトを構築することが責任だからです。
上に書いたことを考え、実行する責任を持つのが「情報システム部門」です。
「自社の実情や課題に即する」とは、自社の経営や従業員の方に思いをはせ、そのうえでITを考える、ということです。
そしてそれは、自社に思い入れ、自社を思いやる気持ちがないとできません。そして、これこそが、情報システム部門と業者との最大の違いです。
情報システム部門は"コンサルタント"である
このように情報システム部門は、自社の実情や課題を踏まえたうえでITを導入する部門です。私たちはさらに
「情報システム部門は、自社の業務改善コンサルティング部門である」
と考えます。
たとえば、皆さまが仕事でお使いになっている電子メールについてです。今は「チャットの時代」と言われていますが、当時、電子メールが普及することによって、私たちは、昔はお取引様に電話・郵便、或いは訪問する必要があった用件が、メールで済むようになりました。これは経営の観点で見ると、電話・郵便・訪問に要する通信費・交通費・時間(人件費)を削減できるという観点で、文字通り、業務効率化に貢献する道具です。
その後、電子メールの利便性を活用し、お客さまへの販売促進に活用したり(キャンペーンのお知らせメールなど)、お取引様との商取引の証憑(請求書、領収書や納品書、注文書、見積書など)なども、メールで送付するようになりました。
これも最初は人手でメールを送っていましたが、「もっと効率化できないか?」という要求の下、キャンペーンの時期や内容を登録すれば、対象のお客さまに自動でメールを配信するメール販促ツールや、見積書等を作成した時点で自動でそれをお取引様に送信する証憑ツールなどが出てきたのです。
そうすると、これまでの販売促進や経理業務のやり方が変わります。
販売促進で言えば、これまで自社や業者に依頼し、手書き郵送していたダイレクトメールに代わり、コンピュータに見込み客やキャンペーン情報、メール配信タイミングなどを登録するのですから。
そこで、情報システム部門は、
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新しい仕事の流れ(業務プロセス)を考え、必要に応じ業務マニュアル・規程などを作成・変更する
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新しい仕事の流れに基づき、関係者にパソコン等ITの操作方法を教えたり、マニュアルを作成する
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問題ある部分を改善する(例.間違ったアドレスに配信しないことのチェックや、キャンペーンメールを受け取りたくないお客さまの申し出に基づき、すぐに配信停止手続きを行う)
などを実施し、新しい業務プロセスが効率的に回るよう、努めるわけです。
もちろん、このITを導入し、導入後は、故障しないよう、日々のITの手入れ(保守/運用)も行いながら。
コンサルタントが、企業などに対して経営課題の解決策を示して、その発展を助ける業務を行う人たちだとすれば、情報システム部門は「ITを使った、助言だけではない、実践的なコンサルタント」と言えるのではないでしょうか。
ITを導入するのは、経営課題の解決として、業務を効率化するためです。そして、業務を効率化するということは当然、「これまでの業務を変える」ことになります。
一般に、これまでのやり方やしきたりを変えることは、大きな抵抗を生みます。にもかかわらず、これを行うのは業務の効率化や働き方改革を通して、自社=経営者はじめ従業員、に恩恵をもたらすからです。
彼ら情報システム部門は、その意味で、「口先だけではなく、皆と協力して、額に汗して働く、地道な自社コンサルタント」と言えるでしょう。
私たちは、そんな情報システム部門の皆さまを是非ともご支援させて頂きたい、もし、貴社に情報システム部門がなければ、「額に汗して働く、地道なコンサルタント」として、精一杯、みなさまに貢献させて頂きたいと切に願っております。

私たちのアプローチ

経営資源の制約とIT投資
大手企業には経営資源=ヒト・モノ・カネが、豊富にあります。ですから、仮に多少のIT投資の失敗、費用対効果に見合わないITを導入しても、それをカバーする再投資、再出費ができます。
<私たちは、大手企業さまともお仕事させて頂いた経験がございますが、彼らも「予算がない」などと言いますが、ケタが違います。もちろん、規模も違いますが>
一方、中小企業さまは、弊社もそうですが、大手ほどの余裕は本当にありません。ですから、「失敗した、じゃあ、もう一度」という訳にはいかないし、それを恐れてIT投資を手控えたくなる気持ちも、本当に、よくわかります。
しかし、今は「ITを戦略的に使いこなし、競争力や生産性の向上を実現し、経営力アップする」IT経営の時代です。自社に合ったITを導入し、それをうまく活用できれば、本当に、経営力はアップできます。
つまり、中小企業様のIT投資のポイントは、
「いかに失敗のリスクを減らして、経営力アップにつながるITの導入・定着を実践するか」
なのです。
弊社の3つの指針
1."ITありき"ではないこと

弊社はITを生業とする会社ですが、IT投資には慎重です。
なぜなら、弊社自体が「失敗した、じゃあ、もう一度」と言える体力のある企業ではないからです。自分ができないのに、お客さまに無謀な冒険を強いることは、職業倫理としてもできません。
あるとき、販路拡大のため自社ECサイトの構築を検討していたご相談企業さまがいらっしゃいました。その会社さまはECサイトの運営は未経験でしたが、希望するECサイトは、自社運営で、決済機能も含めたフル装備のサイトであり、構築だけで数百万は要するものでした。もちろん、その会社さまにとっては「決断」です。
お話をお伺いした私は、まずはオンラインモールに出店して、ECサイトの運営に慣れてから、改めて自社ECサイト構築を検討されてはどうか、とご提案しました。
まあ、ご相談者さまの熱意に冷や水を浴びせる言葉ですね(苦笑)。
その方は、私の言葉に一定のご理解は示して頂けましたが、ご納得はされませんでした。
さて、では、私たちは何故、そんな「冷や水を浴びせるようなこと」を申し上げたか、です。
「是非、やらせて下さい!」って言えば、数百万円の売り上げが上がったかもしれませんし(笑)。
そこには、3つの理由がありました。
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自社ECサイトの運営は、ECサイトならではのノウハウが必要であるが、それを考慮されているか、疑問だったこと
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自社サイトに決済機能も持つということで、追加のセキュリティ対策が必要だが、この考慮もされているか、疑問だったこと
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自社ECサイト以外の販売促進方法を検討されたのか、疑問だったこと
別の機会でお話ししますが、自社でECサイトを持つことは、これまでの対面販売チャネルとは異なる、自社サイトの周知も含めたノウハウ、やり方が必要です。また、自社で決済機能を持つということは、お客さまの重要機密情報を漏らさないため、厳しいセキュリティ対策も必要です。
これらは、最初の構築費用だけではなく、構築後に必要な運用費用(広告宣伝含む)に跳ねてきます。これをご認識されているか、疑問に感じたのです。
そして何より「ほかにやるべき販売促進方法が残されているのでは?」です。
正直、どこの業種でも新規開拓は難しいものです。だから、まずは、「既存の"眠っている"=最近、お取引が少ない-お客さまの掘り起こしの方が、投資対効果という観点でも妥当です。お話をお伺いして、このご相談者さまは、掘り起こしのアプローチを行ったうえでECサイト構築に乗り出したのか、疑問だったのです。
さて、私たちが「ITありきではない」と言うのは、
「そのIT導入は、本当に経営力アップにつながるものですか? 無理はありませんか?」
という問いかけを、お客さまにさせて頂くからです-----これは、ある意味、お客さまにとっては"余計なお世話"かもしれません。
しかし、その問いかけをさせて頂くことこそ、「みなさまの情報システム部門になる」ことだと私たちは考えています。
なぜなら、経営資源に制約あるお客さまに無駄な投資をして頂きたくないからです。
もちろん、ITをやらない、という訳ではありません。例えば、ご相談者さまが「売上を上げたいんだけど、どうすればよいか?」とお尋ねになれば、「まずは眠っているお客さまの掘り起こしはいかがでしょう?」というお話ができたと思います。
そこで、ご相談者さまがそれに同意して頂ければ、眠っているお客さまの抽出と分析を行ったうえで、彼らを呼び戻すための、ITを使ったマーケティングの仕掛けができたかもしれません。仕掛けにもよりますが、それは自社ECサイト構築より、安価だと思います。
相談の場の制約があったとは言え、上記のご提案ができなかったのは、私たちの不徳の致すところです。ですから、今後は、このような、お客様に対して悔いが残らないよう、お伝えすべきことは、しっかりお伝えさせて頂きたいと考えています。
何度も言うように「それが"貴社の情報システム部門"としての責務」だからです。
2.継続的改善

ITの世界で「銀の弾などない」という言葉があります。
ITでは昔から、プログラミングの生産性向上のために、様々な努力がなされてきたのですが、この言葉は、「生産性を飛躍的に向上させる、魔法のような、すぐに使える方法=銀の弾 なんて、ないよ」という意味です。
私たちは、経営の世界においても「銀の弾などない」と思います。ITやビジネスの世界では「これぞ、まさに銀の弾!」と言わんばかりに、いろんな言葉が飛び交っていますが、もしそれが本当に銀の弾なら、弊社含め、企業はこんなに苦労していません。
ただし、魔法のような即効性さえ求めなければ、弾は存在します。「継続は力なり」と言いますが、それがまさに「弾」です。経営用語でいうPDCAサイクルを継続的に回すこと-----使い古され、新鮮味のない用語ですが、マーケティングにせよ、業務改善にせよ、本当にこのPDCAをきちんと実行している企業は、果たして、どれくらいあるのでしょうか。
そして「使ってナンボ」の道具であるITにおいても、PDCAは必要です。導入のための計画を立て(Plan)、実際に導入し使ってみる(Do)、そして、問題点をチェックし(Check)、問題点の改善を実施する(Action)。そしてこのサイクルを繰り返す。導入して終わりではなく、こうした継続的改善を通してこそ、ITが経営力アップに貢献するのです。この継続的改善のポイントとして、私たちは次の3点を挙げます。
ITを使う従業員の方が、その利便性を実感できなければ、いくらきれいごとを言っても使ってくれません。また、ITの導入は新たな仕事のやり方の変化を遠なうので、最初は誰もが戸惑います。
そこで"小さく始める" すなわち、特定の業務や部門に試験的・段階的に導入する等の方法により、現場の皆様のご意見・ご要望を取り入れながら、"素早く成果を出す"ことで、継続的な改善につなげていきます。
ITの意義は言うまでもなく「それが、経営にとってどれだけの効果があるか?」です。定着に向けての工程の中に、IT導入による削減費用/時間、生産性、効率性などを示す客観的な効果測定指標(KPI)を組み込み、現場の皆様、そして経営者の方とこれを共有することで"改善の見える化"を行います。"見える化"により、使う従業員の方のモチベーションも上がるからです。
小さくはじめたITを広めていくためには、業務プロセスの整備や、マニュアル化、ITに関する操作・使い方の指導などが必要です。これにより「誰もが一定の品質を保ち、仕事をする」標準化が図れます。
また、昨今、さまざまな企業で課題となっている法令遵守(コンプライアンス)や、情報漏えい等の脅威を防ぐことも考慮する必要があります。
私たちは、これを「業務の堅牢化」と呼んでいますが、これは従業員の皆さまが、仕事を安全・確実に遂行することを目的としています。
私たちはこの3点を基軸として、皆さまの継続的改善をご支援させて頂きます。
a.小さくはじめて、早く成果を出す(Small Start, Quick Win)
b.効果の測定(KPI)
c.標準化・堅牢化
3.目的に焦点を当てる

"目的に焦点を当てる"-----そもそもの目的をしっかり捕捉し、そこからぶれない、ということです。これは、私たちの座右の銘でもあります。
留意して頂きたいのは、「目標」に焦点を当てるのではない、ということです。もちろん、私たちも目標を重視しています。IT導入による業務改善の中でKPIを管理するのそのためです。しかし・・・売上高や利益率等の目標は、自社だけではコントロールできない、社会・経済情勢にも左右される数値でもあります。
それより、むしろ、ITを導入したそもそもの目的=新規顧客の増加や、既存の客単価の向上、経費削減、時間外労働の削減、従業員の利便性向上等々を忘れず、その目的に向かってご支援させて頂く、ということです。
これは一見、簡単なように思えます。しかし、私たちはしばしば、当初の目的を忘れたり、そこから逸脱して考えたりしがちです。弊社に関して言えば、道具であるITに傾倒するあまり、目的外の追加的機能に目を奪われたり、或いは、お客さま社内の意見をまとめることに注力するあまり、本来の目的と外れた方向で意見集約してしまう、などです。
これがよくないのは「本来の目的が達成されない方向に進む」からです。
実はこうしたリスクは、改善活動(プロジェクト)の至る所に、地雷のように埋まっています。これを避けるには、「そもそも、この改善活動の目的は、何であるか?」を常に自問し、また、お客さまにもそれを認識して頂くことです。
特に、このようなリスクは、改善活動の中で問題に直面したり、煮詰まってきたときに多く発生します。
その時には、
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今直面している問題は、目的達成のための手段における問題であり、もしこれがうまくいかないなら、別の手段を考える
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手段なのだから、完璧さを求めない。むしろ、80%の達成でよしとする
という割り切りも、また必要になるのです。
これは「真面目ではない」に当たるのでしょうか? 私たちはそうは思いません。むしろ「目的に対し、真面目に取り組む」ことだと考えます。
改善活動の中で発生する諸問題=これは必ず発生します=に対して、目的達成のために優先順位をつけ、前に進めていくこと-----これを「プロジェクトマネジメント能力」と言いますが、私たちは、多くのお客さまでの経験を経て、このプロジェクトマネジメント能力を培いました。
この力で、皆さまの業務改善に貢献できればと考えております。
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